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駐日ウズベキスタン共和国大使館

国際会議「中央・南アジア地域の連結性:挑戦と可能性」におけるウズベキスタン共和国ミルジヨーエフ大統領の演説


 まずはじめに、国際会議「中央・南アジア地域の連結性:挑戦と可能性」にご列席の皆さまを心から歓迎申し上げます。

 本日の会議の開催にご支援くださいました国連のアントニオ・グテーレス事務総長に深く感謝申し上げます。

 アフガニスタンのガニ大統領閣下、パキスタンのカーン首相閣下をこの場にお迎えでき嬉しく思います。深い尊敬の念を表します。

 また、本日の会議にご出席賜りましたウズベキスタンの大事なパートナー国の外相を始めとする各国要人の皆さま、権威ある国際機関や世界的な金融機関の関係者の皆様などにも感謝申し上げます。

 コロナ禍という大変な中、この度の会議にご出席いただいたことは、地域間協力、二国間協力の発展をより重視し、それを強く目指してくださっている表れだと思います。

 太陽の恵みとホスピタリティーに溢れたウズベキスタンにようこそお越しくださいました。

 偉大なるシルクロードの交差路に位置する中央アジアと南アジアは何世紀にもわたり、民族間、そして文明間の対話を積極的に進めてきました。

 この2つの地域の緊密な関係によって、新しい知識や哲学、文化・精神価値などが広まり、医学、天文学、地理、数学、測地学、建築、外交、政治などにおいても成果がもたらされてきました。

 中央・南アジアの人々は、人類の歴史に大きな足跡を残したインダス文明やグレコ・バクトリア王国、クシャン帝国、突厥可汗国、ホラーサーン、マー・ワラー・アンナフル、ガズナ朝、ティムール朝、ムガル帝国など、何度となく共通する国家の成立をともに経験し、共通の政治、経済、社会、文化という空間をともにしてきました。

 中央アジアと南アジアは常に信頼に基づいた交易網で繋がり、中東やヨーロッパ、中国などの国々との懸け橋でありました。

  これについては、古代ローマ時代の歴史家ストラボンも「かつてオクソスと呼ばれていたアムダリア川に沿って、カスピ海、黒海を経てヨーロッパまで物が運ばれていた」と書いています。

 紀元前3000年、2000年代、私たちを繋いでいた交易路はカイベル峠やボラン峠を通っていました。

 中央・南アジアの一帯では、イスラム教、仏教、ヒンズー教の伝播や優れた伝統によって、その地域独特の共通した民族的文化というものが見られるようになり、多様性に富んだ豊かな東洋の文化が生まれました。

 この一帯の民族の強い繋がりは、学術や精神世界における興隆を促しました。

 それによって、世界にチャラカやスシュルタ、ブラフマグプタ、アル=フワーリズミ、アルフラガヌス、ファーラービー、ビールーニー、イブン・スィーナーなど多くの偉大な学者や思想家が輩出されました。彼らは何百年も先を行くような学術的、哲学的思想を発展させました。

 また、アミール・ホスロー、アリシェール・ナワイー、アブドゥッラフマーン・ジャーミー、ムハンマド・ハイダル、マフトゥムクリ、ミールザー・ガーリブ、アバイ・クナンバイウル 、ラビンドラナート・タゴール、サドリディン・アイニー、チンギス・アイトマートフなど私たちの地域から誕生した文学者たちの作品も世界的に知られています。

 彼らは平和や自由、人間主義、友好などの思想を広め、異なる民族間の相互理解の促進に多大なる貢献をしました。

 偉大な学者であるビールーニーとバーブルが残した文献は、中央・南アジアの歴史、学問、文化の辞典とも言われています。

 インドの初代首相ジャワハルラール・ネルーがバーブルについて、「彼は魅力ある人格の持ち主であり、ルネッサンス期の典型的な君主である」と言ったことは広く知られています。

 バーブルは自身の回想録「バーブル・ナーマ」で16世紀、インドと中央アジアの間にはアフガニスタンの領土を経由するキャラバンの通り道があり、毎年、何千というラクダが様々な物を運んでいたと書いています。

 バーブルの命によりキャラバンサライが作られ、交易路には井戸が掘られました。

 バーブルの孫、アクバル大帝はバーブルの遺志を継ぎ、先見の明ある寛容な指導者としてインドの歴史に輝かしい足跡を残しました。

 かつて、中央アジアと南アジアの交易には、イランやアラビア、オスマン帝国、中国、ロシアなど、他の国も関係していました。

 歴史書によると、ムガル帝国の君主アウラングゼーブは1695年、ロシアの商人セミョン・マーリンコイに国内で貿易を行う許可を与えています。注目すべきは、この許可を与えるための命令が古代ウズベク語で書かれていたということです。

 残念ながら、19世紀、歴史の流れの中で中央アジアと南アジアという隣接する2つの地域の相互のつながりは途切れてしまいました。

 中央アジアと南アジアの間にはさまざまな障害が発生し、国境は閉ざされ、対立が起き、多くの場合、紛争へと発展しました。

 協力と相互理解の時代に代わって、対立と不信の時代が訪れました。それによるマイナスの影響を私たちは今も感じています。例えば、効率の良い国際ルートが欠乏し、貿易・経済交流の発展の勢いは乏しく、文化・人文交流のポテンシャルも活用しきれていません。

 今日、世界はグローバルな地政学的転換期に突入しています。これは私たちにとって挑戦であり、新たな可能性でもあります。

 このような中で約20億人の人々が住む中央・南アジアが再び相互に交流することがより一層求められています。

 私たちは豊かな歴史的遺産、学術遺産、精神文化遺産や知的ポテンシャルを持ち、経済的に補完し合う関係にあることから、お互いの力を結集すべき時が来ており、それによって大きな相乗効果が生まれることは間違いありません。

 相互のつながりや協力、対話、そして何より信頼というものが私たちの地域の安定と持続可能な発展、人々の生活レベルや福祉の向上の原動力となることを私たちは自覚しており、このようなアプローチは時代が求めているものであります。

 このようなアプローチは紛争や社会的・経済的な大変動とは無縁の地域協力の空間を作り、物、サービス、投資、イノベーションなどの巨大市場を作り出すのに必要な条件を作り出してくれます。

 今回、私たちは次に申し上げるようなことから、本日の会議開催を提案するに至りました。

 第一に、平和を求め、友好、信頼、善隣関係を強め、各国間の相互互恵協力を拡大し、開かれた建設的な政治を行うことは、中央・南アジアのすべての国の共通した利益に資するものであるということです。

 第二に、中央・南アジアの国々とこの地域全体の長期的な発展の大きな柱となるべき安定した貿易・経済網、交通・通信網を作ることを私たちは目指しているということです。

 パンデミックは、それぞれの力を結集しない限り、人類に突き付けられている新たな問題に打ち勝つことはできないことを示しています。

 私たちは経済のデジタル化や電子商取引、新技術の導入などを通じた協力の強化が強く求められていることを感じています。

 第三に、中央アジアと南アジアの実質的な連結性にとって重要な国の一つはアフガニスタンであるということです。

 私たちの地域間パートナーシップはアフガニスタンの和平と安定、そして経済の復興にとって重要な要素であると思います。

 今、アフガニスタンは現代の歴史における転換期を迎えていますが、賢明なアフガニスタンの人々が全国民の協調を見出すための歩み寄りをしてくれると信じています。

 アフガニスタンの和平という悲願を達成するため国際社会も紛争を政治的に解決できるよう全面的に支援していますが、これは重要な意味を持っており、アフガニスタンを地域全体のプロセスに巻き込んでいくための新しい展望を開くものとなるでしょう。

 第四に、私たちの地域の持続可能な発展とパートナーシップの強化をもたらす主な条件となっているのが安全と安定であるということです。

 私たちの安全は不可分な物であり、それをもたらすことができるのは建設的な対話と力の結集のみであります。

 中央・南アジア各国の積極的かつ建設的な対話が貿易・経済、文化・文明の力を完全な形で発揮させていくための新しい可能性を開くと確信しています。

 そのようなことから、次のような提案をさせていただきたいと思います。

 まず第一に、私たちの優先的課題として、貿易・経済交流の促進と相互投資の増加に必要な良好な環境を作るということです。

 これを実現するために実質的な貢献をしうるのは、投資や物、サービスが自由に行き来し、発達した交通網とエネルギーインフラシステムを構築するために有効な対策を策定し、実施していくことです。

 私たちの先達たちがマジュリスやクリルタイ、ロヤ・ジルガ、セブハなどを招集したように、私たちの地域の経済協力の拡大に関する議題や投資協力の強化について協議するための地域間フォーラムを毎年開催することを提案したいと思います。

 このようなフォーラムで練られた提案については、具体的な取り組みや事業などに反映させることによって、新たな雇用を生んだり、安定した経済成長につなげたり、潜在力を開花させることができると思います。

 また、中央・南アジア各国の経済協力に関する多国間協定の締結に関して、専門家による検討を行うことを提案します。

 第二に、安全かつ効果的で近代的な交通・ロジスティックスインフラを整備するということです。

 テルメズ-マザリシャリフ-カーブル-ペシャーワルを繋ぐ鉄道の建設プロジェクトは、すでに主要な国際金融機関を始め、多くの人々から支持を得ていますが、これは中央・南アジアの連結性を築く重要な要素になるべきものであります。

 この鉄道の建設は二つの地域が持つトランジットとしての役割を完全な形で果たし、中央アジアとCIS諸国を通って南アジアとヨーロッパを繋ぐ最短ルートとして輸送にかかる期間を大幅に短縮し、費用を削減することを可能とするものです。

 全体として、この国際鉄道は中央・南アジアの包括的な経済発展を達成するための巨大なプラットフォームを作り出します。

 また、この鉄道はウッタラパサの名で知られ、ヒンドゥスターン平野からタキシラ、ガンダーラ、テルメズを通り、ユーラシア大陸の南部を繋いだ古代インドの北の道の現代版となるでしょう。

 すでに中央アジアとインドを結んでいる国際交通南北回廊は地域をまたぐ交通インフラの成功例となっています。

 アフガニスタンを経由する鉄道網の建設事業は、今後、中国やアジア太平洋地域の主要な国々と中央・南アジアの国々を結ぶことも可能にします。

 これは、一帯一路構想の目的にも完全に合致するものであります。

 第三に、デジタルプラットフォームを導入することによって、中央・南アジア諸国の経済協力を推進していくべきだということです。

 貿易やトランジット、国境の横断などにおける連携をデジタル化する具体的な対策を策定し、共同行動戦略を立てることが必要です。

 この取り組みには中央・南アジア各国の優れた専門家や国連の特別機関の参画を促すことが重要です。

 第四に、中央・南アジアという広大な地域における食糧安全を確保するための道を共に模索するということです。

 近年、食糧が高騰しており、世界の各地で人々は食糧不足に悩まされています。

 そこで、国連食糧農業機関の協力を得て、中央・南アジア各国の農業大臣会合を開催し、食糧危機克服のための計画を策定することを提案いたします。

 この計画には、先端技術の共同開発や研究、導入、生産における協力事業の実施などを盛り込むべきであると考えます。

 第五に、安定と安全を脅かす私たちに共通する脅威との戦いのために力を結集するということです。

 私たちは力を合わせれば、テロや過激主義、サイバー空間における犯罪などを含む国際犯罪対策をより効果的なものにすることができるはずです。

 まず第一歩として、国連薬物犯罪事務所にも参加をしてもらい、麻薬対策共同行動計画を策定することを提案します。

 もう一つ私たちの力を結集すべき重要な分野として挙げられるのは、テロの脅威との戦いであると思います。

 この件に関しては、ウズベキスタンが中心となって中央・南アジアの関係者による専門家会合を開催することを提案します。

 この会合は、国連グローバル・テロ対策戦略実現に関する中央アジア共同行動計画の採択から10年を記念して今年11月にタシケントで開かれる国際会議の中で開催することが可能です。

 第六に、グリーン開発の促進と環境問題には最大限の注力をする必要があるということです。

 地球規模の気候変動が起きている中で、中央・南アジアのすべての国において、工業が急速に発展し、人口増加が進んでいます。

 このような条件下で水不足や大気汚染、環境破壊、土壌の質の低下、砂漠化などは私たちの共通の問題となっています。

 アラル海の枯渇という問題は、今まで以上に地球規模の問題へと変貌しており、非常に深刻な被害をもたらしています。

 アラル海の枯渇による被害を抑え、今後同じような悲劇を繰り返さないためにも、自然と調和した暮らしをしていた私たちの先達にならい、できる限りの取り組みを行う必要があります。

 第七に、私たちは中央・南アジアの素晴らしい観光ポテンシャルを完全な形で発揮させることを目指したいと思います。

 そのためにも、特に聖地巡礼への関心が高まっていることを念頭に、新しい観光ブランドや手ごろな観光商品、観光ルートを作り、ワクチン接種証明書を互いに活用した「新しい条件での観光」を広く導入していくことが必要だと思います。

 そこで世界観光機関の枠組みの中で中央・南アジア民族の歴史・文化遺産を広めるための「中央アジア・南アジア計画」を策定することを提案します。

 第八に、学術、文化・人文交流を拡大することは、友好と信頼を強めるために必要な重要な条件の一つであるということです。

 そこで、ユネスコの協力を得て、ウズベキスタンのテルメズで国際フォーラム「中央・南アジアの歴史遺産」を開催することを提案します。

 私たちの国々では若者が人口の中でも大きなウエイトを占めていますが、多くの若者を巻き込んで教育、学術、文化、スポーツなどの共同事業を優先的に実施していく必要があると思います。若者はかけがえのない宝であるからです。

 若い世代がどのように成長を遂げていくのか、どのような育児や教育を受けていくのか、私たちが若い世代にどのような環境を作り、どのような社会進出を促していけるか、これらによって私たちの国や民族の運命と将来は決まります。

 そこで、若者の問題に関して効果的な協力を推進していくために、常設の中央・南アジア青年会議を創設することを提案します。

 第九に学術、技術、イノベーションで大きな成果を生むことは私たちの国の急速な発展にとって重要な要素であるということです。

 共同研究やイノベーション開発、学術研修、経験を共有するためのプログラムなどの実施を推進する必要があります。

 そこで、学者や研究者のためのビザ発給の簡素化を行い、中央・南アジアの大学や学術・研究機関の協力を推進するためのオンラインプラットフォームを作ることを提案します。

 第十に、今日、中央・南アジアの発展と連結性に関する傾向を体系的に調査・分析しながら、様々な解決策を練っていくことが未だかつてないほどに重要になっているということです。

 本日の国際会議の前日には「中央アジア国際センター」が開設されました。

 この分析センターを足場に、私たちの地域協力の推進のため、地域各国の優れた学者や研究者からなる常設の専門組織を開設することを提案します。

 また、本日の国際会議を総括して、安定した持続可能な発展のための重要な要素としての中央・南アジアの連結性、そしてユーラシア大陸全体における連結性の強化に関する特別決議案を策定し、国連総会に提出することを提案します。

 この決議案では、私たちの共通のアプローチや主な原則、対話の方向性等について定めるべきだと思います。

 また、この決議案で中央・南アジア各国の地域連結性に関するハイレベルフォーラムを定期的に開催していく準備があることを表明するべきだと考えます。

 これらのプロセスにおけるウズベキスタンの役割については、次のことを特に指摘しておきたいと思います。

 まず、今回の会議が新しいウズベキスタンの形成と発展という歴史的に重要な時期に開催されているということです。

 我が国は、社会生活のすべての分野において、体系的な民主改革を首尾一貫して行っています。

 この民主改革は、大々的で不可逆的なものであります。これは我が国民が選択した原則であります。

 カザフスタン、キルギス、タジキスタン、トルクメニスタンという中央アジア各国との善隣関係の発展における抜本的な変化は、ウズベキスタンの対外政策における主な成果であります。

 私たちは共に力を合わせることによって、この地域に今までとは全く異なる信頼と相互支援の雰囲気を作り出すことができました。

 私たちは定期的に対話を行い、発展のための新しい柱とポイントを共に見つけ出すための効果的な場を作ることができました。

 8月の初めには定期的に行っている中央アジア諸国首脳会議がトルクメニスタンで開催される予定です。

 特に強調したいのは、ウズベキスタンは建設的かつ相互互恵的な協力の発展を目指す安定した信頼のおける予知可能なパートナーであるということです。

 中央アジアと南アジアは歴史的にも文明的にも共通しており、その共通性はともに素晴らしい未来を創っていくための堅固な基盤であります。

 効果的な地域連携や協力の強化なしに私たちが今日直面している問題を克服していくことはできないということを自覚すべき時が来ています。

 共に持続可能な発展と繁栄を可能にしていく明確な未来のビジョンを描いていかなければなりません。

 私たちは共に中央・南アジア、そしてユーラシア大陸全体を経済的にも発展し、安定し、繁栄した空間へと変えていかなければなりません。

 本日の会議が実り多いものとなることを願っております。

 ご清聴ありがとうございました。



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